──難治性統合失調症の方へ、新たな選択肢──
クロザリル(一般名:クロザピン)は、他の抗精神病薬では十分な効果が得られなかった
「難治性統合失調症」の患者さんに対して、効果が認められているお薬です。
日本では2009年に使用が認可され、現在では専門医のもとで、安全な管理体制のもとにのみ使用されます。
対象となる方
以下のいずれかに当てはまる場合、クロザリル治療の対象となります。
- 抗精神病薬を2種類以上、十分量・十分な期間使用したが効果が不十分
- 副作用が強く、治療継続や増量が困難
まずは診察と評価を行い、クロザリルの適応があるかを確認します。
クロザリルの効果
以下のような改善が期待されます。
- 幻覚や妄想など陽性症状の改善
- 認知機能の改善
- 攻撃性・暴力行為の軽減
治療の流れと期間の目安
導入期(入院・原則18週間)
クロザリル治療の開始は、安全性の確保のため原則として18週間の入院が必要です。
この期間中に、少しずつ薬を増量しながら、効果や副作用の有無を慎重に観察します。
また、血液検査や全身状態のモニタリングを週1回以上行い、安全に服用を継続できる状態を整えます。
安定期(外来移行後 約3か月〜)
入院期間終了後は、状態が安定していれば外来での治療に移行します。
引き続き定期的な血液検査と通院を通して、副作用の早期発見と治療効果の確認を行います。
維持期(長期継続治療)
症状が安定しても、クロザリルは長期にわたって継続する必要があります。再発予防のためにも、医師の判断のもとで治療を続けていきます。
※治療期間は個人差がありますが、半年から1年以上の継続が必要とされるケースが一般的です。
注意すべき副作用と安全管理
クロザリルは有効性の高い薬ですが、副作用にも十分な注意が必要です。
主な副作用
- 顆粒球減少症(最も重要)
- 心筋炎
- けいれん など
顆粒球減少症とは
免疫機能の一部である「好中球」が減少し、感染症にかかりやすくなる副作用です。
これを防ぐために、定期的な血液検査が必要となります。
当院での安全管理体制
- 治療中は、週1回〜月1回の血液検査を継続します
- 聖マリアンナ医科大学病院 血液内科とも連携し、緊急時にも対応できる体制を整えています
- 処方にあたっては、国の規定により、クロザリル患者モニタリングサービス(CPMS)への登録と報告が義務付けられています
- 厚労省の定めるクロザピン適正使用委員会に認可された医師と医療機関のみが処方できます
当院のクロザリル治療体制
当院は、クロザリル登録医とともに、研修を受けた看護師・薬剤師・精神保健福祉士・臨床検査技師などによる多職種連携チームで治療に取り組んでいます。
- 初回導入時は、安全確保のため入院対応も可能
- 治療開始前に、効果・副作用を丁寧にご説明し、文書による同意をいただいたうえで開始します
- ご本人・ご家族に対しても、継続的な支援と相談体制を整えています
ご相談・ご予約について
クロザリル治療をご希望の方、ご興味のある方は、まずは当院までお電話ください。
受診の流れや必要書類などをご案内いたします。
「もう治療の手段がないのでは…」と感じていた方へ、
新たな選択肢として、クロザリルという治療法があります。ご本人とご家族のこれからの暮らしを、チームで支えていきます。