先輩インタビュー【精神保健福祉士】石井

あさひの丘病院 
医療相談室

精神保健福祉士

石井 有紀

2022年4月入職

- 福祉系の学部を卒業していますが、最初から精神保健福祉士を目指していたのでしょうか?

そういうわけでもないんです。卒業後の具体的な進路まで考えてはいませんでしたが、いずれにしても資格は取りたいと思いましたし、どんな勉強も将来無駄にはならないだろうなと。進学はそういう感じでした。
大学に入って、児童関係の福祉ボランティアや、知的障害などいくつかの仕事に携わる機会があったなかで、精神障害の分野が「当事者とのかかわりが面白いな」と感じたのが大きかったです。

- 精神障害の当事者とのかかわりが面白いと思った、というその「面白さ」とは、どのようなところだったのでしょう?

大学生の時にアルバイトをしていたNPO法人で、中高生を対象にした引きこもりの居場所支援と、大人の精神障害者のためのジョブコーチのサポートをしていました。どちらも、お話をして相手の言葉を聞いていると、「うん、その考えはわかる。理解できる」という部分があるいっぽうで、「ああ、そういう考え方や受け止め方をするんだな」と、自分では思いつかないような新鮮な発見する部分がありました。
その方の障害は目には見えないだけに、ご本人の辛さは周りの人にはイメージが湧きにくい。でもじっくりお話を聞いていると、その辛さが自分にもリアルに見えてくる。そういうところが興味深かったです。そして、ご本人はその辛さを乗り越えて、今はこんな仕事をして自立されているんだなとか、今では放課後デイに来られるようになったんだな、学校に行けるようになったんだなとか、そういう変化を感じられるところが面白いなと感じました。

- そのような体験を通じて精神障害の分野に興味を持ったわけですね。では誠心会に来ることになったのは、どのような経緯なのでしょう?

私の大学では、あさひの丘病院が精神保健福祉士コースの実習先になっていたんですが、学年がひとつ上の先輩がこちらで実習させていただいたときに、「グループホームのアルバイトの募集が出ているよ」という情報を流してくださって、それで興味を持ってアルバイトを始めました。

周囲からも誠心会について「あそこは歴史が長くて、地域の中でしっかり活動してきた法人だから、基本から学ぶのにいいよ」と聞いていたのもあって、そのまま就職させていただいたという経緯です。

- そのような興味を持つうちに、先輩からの勧めもあって、誠心会に来たということですね。最初から医療相談室が希望だったのでしょうか?

そのときは医療相談室の採用枠はなかったんです。募集していたのは生活訓練施設とか、当時は就労移行支援事業所もありました。誠心会にはデイケアなどもあるし、いずれいろいろな経験をさせていただけるのもいいなと思っていました。だから特に相談室希望というわけではなかったですが、もし相談室になるならもちろんそれでも構いませんとは面接時にお話しました。でも実際に病院の相談室配属だと聞いた時はちょっとびっくりしました。

- 実際に入職してみていかがでしたか?やはり大変でしたか?

そうですね(笑)。学生のときはアルバイトやボランティアとしての責任の範囲で面白さや感動があったんですが、入職後は仕事として関わるのだという重さをやはり感じました。最初のうちは、相談室にかかって来る電話をとるのが主な役目で、まだ当事者との関わりは少なかったのですが、それでもボランティアのように「楽しい」だけではうまくいかないな、というギャップはあったかもしれません。
そのうち少しずつケースを持たせてもらえるようになって、任せてもらえるようになったのは嬉しいのですが、それはそれでまた責任がずしっとのしかかる感じで緊張しました。

- いま5年目になってみてどうでしょう? 大変さが増してきましたか?


いえ、やっと面白くなってきたところです。最初の配属は2階病棟(スーパー救急)だったので、スピードを求められる面もありますし、病棟全体がすごく忙しく動いている中で、流れについていくのに必死でした。先生の方針を汲み取りながら、多職種でコミュニケーションとる難しさもあって、最初はけっこう苦労しました。でも勤続年数が長くなってくると周りとの関係性も出来てきますし、自分からも積極的に話しかけるようにアクションを工夫するようにしたら、いまは多職種連携がしやすいです。それぞれの視点から見た患者さんの状況を気軽に聞けるようになったら、患者さんのことをより深く考えられるようにもなって、楽しくなってきた感じです。

今は6階病棟(急性期)と5階病棟(地域包括ケア)を担当していますが、そうするとこれまでと比べて患者さんの層も広がり、関わり方が違ってきます。ご家庭に事情を持っておられる方も少なくないので、それに合わせたケースワークが必要ですし、退院するための病棟での過ごし方なども大切になってきます。担当病棟を替わったことによるそうした新しい経験も興味深いなと思います。

- 今後の仕事について、石井さんとしては何か意向はありますか? このまま相談室のケースワーカーとしてキャリアを深めるのか、これまでの経験を活かして今後は地域のほうに入っていきたいと思うのか。そのあたりどうでしょう?

そうですね。最後はやはり退院して地域で生活することになるわけですし、そうした地域のフィールドに移ればそれはまた新しい良い経験ができるなと思います。
でも、自分が5年間で感じた病院のソーシャルワーカーとしての面白さというのもあるんです。というのも、入院は症状を改善する場であると同時に、生活を立て直す機会だと考える患者さんやご家族や支援者の方も多いんです。体調が悪くて、先のことなど到底考えられなかったものが、入院して体調がよくなったからこそ生活全般の立て直しが出来る。退院後の生活に繋げていくための動きを、いちばん身近でサポートできるのは病院の相談室なのかなという気もしています。退院後すぐは無理でも、いずれ仕事の再開を目指すという方がいれば、それに向けて役立つ情報を提供したり、具体的に相談できるところを紹介する。退院したあとの、患者さんの次の生活に繋がるような関わり方をしたい、入院中にそうした動きをもっと出来るようになりたい、というモチベーションもあります。
入院というのは、患者さんにとってそんな転機となる大きなエピソードだと思うので、そこを支援の入り口として深く入っていけるという感覚は自分にもありますし、先輩方の動きなどをみていてもそう感じています。そういうところが病院で働ける魅力ですね。

- いま活き活きと面白さを語ってくれましたけれど、逆に、この5年間で仕事の難しさを感じることはありませんでしたか?

もちろん難しさもあります。いま入退院という場面で関わるやりがいの話をしましたが、それでもここは患者さんにとって通過点に過ぎません。ご本人にとって本当に大変なのは退院してご自宅に戻られたあと、施設に入られたあとです。そんな心配や不安について、患者さん本人やご家族から幅広くお話を伺っても、医療の枠組みですべてカバーできるわけではないですし、病院のワーカーとして出来ることの限界や、入院中には時間的にやりきれないこともたくさんあります。また、措置入院などで遠くの地域から来られた患者さんは、退院後はそれぞれの自治体に戻られます。近隣の外来患者さんであればフォローできますが、遠くだと情報が途絶えてしまう。その後どうなったかなあと気になっていたら症状が悪化して再入院されてしまう、ということもある。そういうときには残念というか、もやもやすることもあります。
ほかにも、合意形成が大変な時もあります。患者さん本人はもちろんですが、ご家族や地域の支援者さんなど、関わる方にもそれぞれ想いがあるので、そうしたご意向をうまく調整しながら皆が納得できる結論を見つけていくのは簡単なことではありません。自分の説明の仕方で相手の受け取り方も変わるのであれば、そういう部分は勉強していきたいとは思うのですが。

- この先の仕事、ワーカーとして目指したいことは何かあるでしょうか?

今後、自分の生活のステージが変わっても、この仕事はずっと続けていきたいです。私が入職したときの相談室長や先輩ワーカーの皆さんは、かつてグループホームを立ち上げられたり、居場所を作ったり、外来の患者さん向けのプログラムを作ったり、そういうサービスを開拓されてきた方々です。サービスというよりも、必要なのだからやるしかないという想いで動いた、という話を聞いています。そんなふうに、今あるサービスではまだ支援が届いてないところ、足りないところがあるのなら、新しい仕組みやサービスを作れるようにアクションを起こしていく。将来的にはそんな動きが取れるようなワーカーになりたいな、という気持ちはありますね。

- 5年目の中堅ワーカーとしては、後輩とのかかわりはどうでしょう?

自分も1~2年目のときには、相談室や他部署の先輩方に支えていただきました。いまもまだ迷うことばかりで、そういう時は先輩や周りの方に相談して、アドバイスをもらうことでなんとか前に進んでいけているという感じです。だから今度は逆に、新しく来た方にはこちらから気にして声をかけたり、相手から質問をもらったら忙しくてもいったん手を止めて向き合うとか、先輩がやってくれてありがたかったなと思うことを、自分もしっかり意識してやりたいなと思っています。

- 最後に、いま就職や転職で迷っている方に向けて一言お願いします。

さきほども言いましたが、入退院という場面で患者さんと関われることで、その後の生活支援の入り口に立てるというところが、病院のケースワーカーの強味でもありやりがいに繋がる部分だと思っています。そして誠心会には70年の歴史があり、その時々で患者さんのためにワーカーが出来ることを考えながらここまでやってきて、今もたくさんのワーカーがそれぞれの部署で仕事をしながら、部署を超えた横のつながりもあります。そういう点で、とてもやりがいの持てる、勉強にもなる職場だと思います。迷っているなら一度見学をしてみてはいかがでしょうか。

- ありがとうございました。