先輩インタビュー【看護師】丸山

神奈川病院 2A病棟

看護師

丸山 敦也

2022年7月入職

- 神奈川病院に来る前は、どのような仕事をされていたのでしょうか?

僕は九州の出身で、神奈川県に引っ越してきたのがまだ3年前です。看護師の母を小さい頃から見ていて、自分も早く働きたいと思ったので5年で資格がとれる一貫制の学校に進学し、20歳で看護師免許をとりました。そして病院に勤め始めたんですが、実はそこを半年ぐらいで辞めてしまったんです。しばらく看護師とは距離を置きたくなってしまって、そこから数年間は医療とは一切関わらずに他の仕事を転々としていました。

- 早く仕事をしたくて看護師になったのに、すぐに辞めてしまったんですね。何があったのでしょうか?

それまでアルバイトなど一切したことがなくて、社会に出て仕事をすること自体が初めてで、戸惑ってしまったということもあると思いますが、その時のプリセプターがあまりにも厳しくて怖くて、気持ちが折れてしまった部分があります。
 でもなにより辛かったのは、認知症の患者さんに対して看護師が不適切な対応を取っているのを目撃してしまったことです。病状から出た言葉だと思うのですが、患者さんが看護師に食って掛かったときに、それに対してとても高圧的に強い言葉を投げ返しているのを目の当たりにしてショックを受けました。看護師ってこんな仕事だっただろうか、と幻滅してしまったんです。また同じような目に合うのが嫌で、看護師には戻りたくなくて、他の仕事でなんとか食いつないでいました。

- そんなことがあったのですね。しかしそのあと、もう一度看護師に復帰するわけですね。

そんな数年間を過ごしたあと、思うところあって実家を出て、神奈川県に出て来ました。本当に無計画で来てしまって、来てみたら家賃も高いし、就ける仕事があまり見つからない。自分の手元にあるのは看護師免許だけだから、生きていくために本当に最後の手段というか、もういちど看護師の免許を使ってできる仕事を探そうと思いました。

病棟にトラウマがあったので、保育園や幼稚園付きの看護師を探したり、企業に常駐する企業看護師を探したんですが、そういうところは相応の経験を求められるところが多かったです。病棟に戻るのは気が重たかったけれど、半年ですぐに辞めてしまったことを自分でも後悔する気持ちがあったし、それを払拭するためにも、もう1度だけ病棟で頑張ってみようと思いました。

- 神奈川病院に入職された経緯はどのようなものだったのでしょうか?

その頃、母が精神科の病院で働いていて、「あなたは人の話を聞くのが上手だから、きっと精神科に向いてるよ」って薦めてくれたんです。それでいくつかの精神科病院を見学したうちのひとつが神奈川病院でした。
僕にはほとんど病棟経験がないしブランクもあるから、他の病院にはあまり歓迎されなかったんですが、神奈川病院の面接だけは「別に構わないですよ。うちに来ませんか」と言ってくれたんです。医療とは関係のない仕事をしていたことも特に問題にはしていないようで、自分としては気持ちがすごく楽になりました。
入職は2022年の7月です。久しぶりの病棟勤務だったし、とにかく精神科に慣れるのが先決だったので病棟の希望は特に無かったんですが、2A(精神科急性期治療病棟)に配属されました。

- 実際に入職されてみて、どうでしたか?

想像以上に働きやすくて助かりました。最初の病院では職場環境の問題でつまずいたのですが、ここはみな和気あいあいとやっていて、すごく空気がいいなと感じました。プリセプターさんにもすごく良くしてもらって、ちょっと大げさな言い方ですが、自分のトラウマが1つづつ払拭されていった感じですね。

- 最初の職場を離れる原因となった人間関係の難しさが、この職場ではなかったとのことで、良かったです。 業務そのものについてはどうでしょうか?

やはり最初はどういう動き方をしたら良いのか、全然わかりませんでした。相手がどういう病気で、どのような症状なのか、それがわからないということもありました。でもまずは、患者さんとの信頼関係が築けないと始まらないなと思ったので、こちらから積極的に声をかけたり、できるだけ相手の話をしっかり聞くようにしました。そのうちに、患者さんのほうから声をかけてくれることが増えてきて、ああ自分なりにちゃんと仕事に取り組めているのかな、と思えるようになりました。相手の話をじっくり聞くということ自体が、治療効果にちゃんとつながるんだということも感じられて、すごくやりがいを感じましたね。

- 患者さんへの対応で困ることはありませんでしたか?

やっぱり慣れないうちはありましたね。
たとえば患者さんの暴言などは病状だと割り切るのですが、時には気持ちの切り替えが難しい時もあります。

- そういう時はどうするのでしょうか?

1番簡単なのは対応を他の人に変わってもらうことですよね。自分一人じゃないというのが病棟の強みだと思うので、できないことがあれば替わってもらえばいいですし、わからなかったら教えてもらえばいいです。
一人で溜め込むとどうしても気持ちが疲れちゃうので、病棟で起こったことはステーションで共有して、他の人の感想や対応法を聞いたりして、自分だけで考えこまないようにしています。
最初に勤めた病院では人間関係が合わなくて、病棟そのものが嫌いだったし、周りに人がいること自体も嫌だったんですが、今はむしろ逆ですね。周りに人がいることですごく安心できるし、自分以外に頼れる人がいる環境っていうのが、自分にとってはありがたいことだと感じます。そのあたりが心境の変化かなと思います。

- それは良かったです。今後の仕事について、何かイメージしていることはありますか?

自分では精神科の病棟勤務が向いていると思うので、このまましばらく続けたいと思っています。一般科でも病気の回復のために看護師が貢献できることはたくさんありますが、精神科はそれがもっと顕著というか、看護師の声掛け1つで患者さんが変わるのも精神科だと思います。そういう意味で、治療の中で看護師が持つ影響力も大きい。それが精神科のやりがいじゃないかなと思います。

- 声掛けひとつで患者さんが変わる、病状の改善に貢献できる余地が大きいということですね。そのことで逆に、こちらの対応ひとつで患者さんが崩れかねない、そのリスクが怖いと感じることはありませんか?

もし崩れたとしたら、崩れたことも評価の1つになると思っています。
ひとつの声かけが患者さんにプラスに働いたなら、それはその人にとっては良い刺激だったという評価になりますし、逆に、特にどうということのない一言でその人が怒ってしまったとしたら、この人はまだそのぐらいの刺激で怒ってしまうような病状なんだな、という評価に繋がります。
こちらが感情的に口走った言葉で患者さんが崩れてしまう、というのは問題だけど、そうではなくて、治療的な意識をちゃんともってかけた言葉であれば、その結果がプラスに出たとしてもマイナスに出たとしても、それ自体が評価になるんだと思います。

- 適切な姿勢で向き合っている限り、起こったことに対して個人的に責任を感じる必要はまったくない、ということですね。

そうです。それこそさっきお話したみたいに、起こったことを周りの人に相談して、次の対応を考えれば良いですから、怖さというのはそうやって払拭できるものかなとは思います。

- お母様から「精神科に向いているんじゃない?」と勧められたということですが、今のところ、その判断は正しかったということになりそうですね。
自分では、どのようなところが精神科に向いていると思いますか?

なんでしょうね? たぶん、よくも悪くもほっとけないという、面倒見の良さみたいなものかもしれません。面倒見という言葉が適切かどうかわかりませんが、患者さんが僕のほうを見ていたり、何か声を掛けたそうにしていると、「どうしたの?」とこちらから声をかけたくなっちゃうんですね。やりすぎると業務が滞るし、自分自身も疲れてしまうので気をつけないといけませんけれど、相手と関わることが苦にならない、むしろ積極的に関わりたいと思えて、それを楽しめてしまうところが強みなんじゃないかと自分では思います。

- 義務感からではなく、コミュニケーションを楽しめるというのは大きな強みでしょうね。では、今後こういう仕事をやってみたい、というものは何かあるでしょうか?

2A病棟は少し前に新しい体制になりました。いま、病棟としてアルコール依存症の患者さんに対する看護の方針を、あらためて考え直しているところです。自分も今まであまりちゃんと動けていなかったのですが、せっかく研修にも行かせていただいていますし、そうした病棟の新しいスタンダード作りに自分も関わっていきたいなと思います。以前は師長や主任中心に対応をしていたところがあるのですが、これからはメンバー全体がフラットな立場で、病棟全体として対応できる形ができたらいいな思います。

- では最後に、精神科への転職を迷っている方がいたら、どのように声をかけてあげますか?

僕だったら「人と話すのは好きですか?」って尋ねます。好きなら全然問題ないですよ、って伝えたいです。必ずしも話が好きでなくても良いとは思いますが、患者さんから話しかけられることも多いので、好きだとたぶん働くのが楽だと思います。だから話が好きか嫌いかは、働きやすさに直結する部分はあるかなとは思います。
あと、一般科はけっこう慌ただしいと思うんですね。うちの病棟も急性期なので、すごく忙しい時ももちろんありますが、全体的にはわりと落ち着いたペースで仕事を進めやすいかなとは思います。僕も時間に追われるのがすごく苦手なので、そういったところも精神科は働きやすいと思います。

- どうもありがとうございました。