インタビューした先輩
あさひの丘病院 6階病棟
看護師
鈴木 佐歩子
2022年4月入職

患者さんとの関わりを
深く学ぶなら精神科
- 医療職を目指したきっかけはどのようなものでしたか?
父は薬剤師、姉は病院の管理栄養士だったので、医療職には馴染みのある家庭環境ではありました。母もむかし看護師になりたかったという話を聞いていましたし、私も看護師になりたいという気持ちは昔からあったように思います。看護で有名な大学への進学を考えたこともあったのですが、その時は1回諦めて普通科に進んだんです。でも結局、それは自分のやりたいことじゃないということに気づいて、大学1年の時に退学し、看護学校を探して入学しました。
- いったんは看護の道を諦めかけたけれど、やっぱり看護師になりたいという気持ちを忘れられなかった。
そうですね。1回諦めて大学生になったとき、祖母が体調を崩して入院してしまい、その時に看護師さんと接したことも自分の気持ちを思い返すきっかけになったように思います。
- 看護師になりたい気持ちを、もともとそれだけ強く持っていた、ということでしょうね。
看護師という職業に憧れはありましたけど、でも最初のうちはたとえばキャビンアテンダントのような、多くの女の子が憧れる職業に私もずっと憧れ続けていた、という感じだったかもしれません。でも、気づけばいつの間にか看護師になりたいという気持ちがはっきり芽生えていて、そこに祖母の入院なども重なって、最後は行動に踏み切ったという感じでしょうか。
- 最初から精神科に就職しようと思ったのはなぜでしょう? 一般科で手技を身につけてから精神科に行っても遅くない、と看護学校の先生からアドバイスされることも多いと聞いていますが。
はじめは私も精神科のことはよくわからなかったし、抵抗がまったくなかったわけではないんです。そこで看護学校の就職相談で、尊敬していた精神科担当の先生に訊いたんです。「精神科と一般科とではやることもかなり違うようですし、最初の就職先としてはどうなんでしょう?」と。

そうしたら先生は「手技ももちろん大事だけれども、どの領域で仕事をしても患者さんとの関わりは絶対に避けて通れないのだから、その関わり方を深く学べる精神科という領域は、看護師が最初に学ぶ場所としては逆にいいと思う」と言ってくれたんです。実習であさひの丘病院に来た時もすごく楽しかったし、だったら精神科、あさひの丘病院に行きたいなと思って決めました。
はじめての不安と
面白さと
- 実際に入職してみてどうでしたか?新卒でしたから仕事をすること自体が初めての経験でしたし、いろいろ苦労されたのではないかと思いますが。
一般科で仕事をしたことがないので比較はできないんですが、やっぱり精神症状で暴言が出たり手が出たり、そういうのは割と多い職場なのだなとは思います。たとえ患者さんでも、暴言を言われた側からすれば、やはり傷つくこともあります。
でも、一緒に働いている先輩がちゃんとフォローしてくれます。暴言を言われるのはある意味で当たり前というか、避けられない職場かもしれませんが、そのことをあまり深刻には受け取らないように、良い意味ですぐに笑顔に戻れるように気を配ってくれました。だから患者さんから言われたことをあまり気にし過ぎずに、楽しんで働けているんじゃないかと感じますね。
- 患者さんに暴言を吐かれた瞬間は傷つくこともあるけれど、周りがフォローしてくれるから後々まで引きずらない、ということですね。では職場に行くのは気が重い、ということはなかったですか?
ありませんね。仕事をいやだと思ったことはないです。
- 就職して仕事をすることに、まったく不安がありませんでしたか?
そういうわけでもないです。なにしろ看護師になるまでが大変で、いま考えると何がそんなにしんどかったのか、ちょっとわからないんですけど、自信をなくした時期もあったんです。だからたぶん、ここに就職する前はそれなりに悩みながら来たんじゃないかなとは思います。でも、実際に来てみたら仕事は楽しかった。そのままの流れでここまできているので、そこまで深く悩んだという印象が残っていないんじゃないかと思います。

もちろん、社会人になるという一般的な不安はあって、たとえば就職しても辞めちゃわないだろうか、というような心配はしていました。人間関係とか、うまくやれるかなとか。大学でも、看護学校でも、いろいろと苦しいことはあったので、今回のこの就職もちゃんとやってけるかな、という不安はありました。
- 不安がなかったわけではないけれど、実際に就職してみたら 周りのフォローもあって仕事が楽しかった、ということですね。それは良かったです。ご自分のどういうところが精神科看護と相性が良かった、と思いますか?
なんでしょうね。うまく言葉にできるかどうかわかりませんが、やはり自分自身もいろいろと不安を抱えながら、 辛くなってしまった時期もあったわけです。そういう時期を過ごして、今こういう職場に仕事に来ている。そんな自分の辛い経験もこの仕事には活かせるんじゃないか、ということでしょうか。もちろん人によって悩みは全然違いますから、私個人の経験が本当に生かせるのかどうかわかりませんけれど。でも最初はそんな気持ちで仕事をしているうちに精神科が面白くなってきて、働いているうちにどんどん興味が湧いてきた、ということなんじゃないかなと思います。
迷ったら精神科、でいいと思います
- 自分自身の経験と重ね合わせて関心を持つうちに、シンプルに仕事が面白くなってきたということですね。そんな鈴木さんにとって、患者さんとの距離感の取り方や接遇について、何か思うことはあるでしょうか?
入職したばかりの時に、たまたま年齢が近い患者さんがいまして、やっぱり歳が近いと患者さんからも距離を縮めに来てくれるというのか、距離感ちょっと近めで話をしていたんです。そうしたら、その子から退院後にプライベートな内容の手紙が届いたんです。それを読んで先輩に相談したところ、患者さんとの距離の取り方は大事だよ、と教えてもらいました。入職したての時は、距離感の大切さをちゃんとはわかってなかったですね。それからは、ただ仲良くなればいいというのではなくて、ちゃんと看護師としての、看護師と患者さんとしての距離感を、いまは意識するようにしています。

- いまはどんな患者さんでもうまく対応できるようになりましたか?
自分にとってはほとんどの患者さんが年上の方になるので、 関わり方でちょっと悩んだりはしましたね。例えば内科や外科なら身体の病気を治すために来ているわけだから、年齢はあまり関係ないかもしれません。でも精神科となると、やっぱり会話を通じての看護が大事になるというか、お互いに人として信頼関係が結べないとうまく務まらないというか。患者さんにしてみると、 こんな若い子にはちょっと話せない、ということもあるように思います。 その点はすごく悩みましたけど、でも、それはもうしょうがないと。今はそこのところは先輩にお願いしていますね。
- いま就職を考えている看護学生の中には不安でいっぱいの人もいると思います。そういう人に向けて、かつて不安を抱えながら就職活動をした先輩として何かメッセージはありますか?
看護学校に入る目的や、看護師になる理由は人それぞれですし、不安の中身がわからないのでアドバイスになるかどうかはわかりません。でも私がそうだったように、どこに就職したら良いのか、看護師になったのはいいけれど何科に行けば良いのだろうかとか、そういうことに悩んでいるのだったら精神科でいいと思います。私は精神科に最初に来て本当に良かったなと思っているので。
- 実際に悩んだ体験者としてのアドバイスですから、説得力がありますね。
ありがとうございました。