修正型電気けいれん療法(m-ECT)とは
神奈川病院では、修正型電気けいれん療法(m-ECT)を施行しております。これにより、重症や治療抵抗性のうつ状態、昏迷状態、急性錯乱状態などに対し、迅速かつ強力に対応できます。
電気けいれん療法(ECT: Electroconvulsive Therapy)とは、頭皮に通電して脳を電気的に刺激する治療法です。脳内に発作を誘発し、様々な精神症状を改善します。
現代の方法では、麻酔科医の全身管理のもと、静脈麻酔により患者様が眠っている間に施行されます。筋弛緩薬を使用することで、大きなけいれん発作を発生させることなく治療が行えます。 この施行方法を、修正型電気けいれん療法(m-ECT: modified ECT)と言います。
m-ECTが有効な病態
昏迷状態、うつ状態、急性錯乱状態、幻覚妄想状態など、多くの病態に有効です。特に、拒食や自殺の危険性のために患者様の生命・身体に危険が及んでいる状態に対し、しばしば高い効果を発揮します。治療抵抗性のうつ病、双極性障害、統合失調症、統合失調感情障害、強迫性障害などに対しても効果を示します。
m-ECTの安全性
m-ECTは、静脈麻酔薬および筋弛緩薬を使用すること、頭部に通電をすることから、しばしば危険な治療と誤解されがちです。しかし実際は、薬物療法より安全な場合が多くあります。特に、向精神薬の副作用が出やすい高齢者においては、しばしば薬物療法に優先して推奨されます。もちろん、m-ECT特有の副作用(施行後の頭痛や一過性の記憶障害など)が出現することもあるので、m-ECTと薬物療法のどちらを優先すべきかを、医師とよく話し合って決定する必要があります。
m-ECTの施行頻度、治療に必要な期間
m-ECTは麻酔を必要とするため、入院中に行われます。当院では原則週2回のペースで治療します。総治療回数は、多くの場合、8回から12回程度です。12回行う場合、術前検査と合わせ、7週間程度の治療期間を要します。
m-ECTの治療効果
m-ECTの治療効果は高く、術前の診断が正しい場合、8割を超える確率で効果を示します。
治療効果の面での唯一の問題は、効果が持続しない場合があることです。原則的に入院中にしかできない治療であり、治療終了後1ヶ月程度で症状が再燃することがあります。一方で、m-ECTによって軽快した後に薬物療法を施すことで、良好な状態の維持が期待できます。
m-ECTを希望される方へ
m-ECTは強力な治療ですが、心因性の(心理的な)病態に効果を示さないなど、限界もあります。施行のためには、十分な診察と、それによる正しい診断が必要です。m-ECTの施行を検討される場合は、まず当院の医療相談室までご連絡ください。